Journal

色と音
私は音楽に囲まれて育った。母はピアニスト、父はアコースティック・エンジニアで、日常にはいつも何かしらの音が流れていた思い出がある。 そんな環境にいながら、意外にも「音楽そのもの」を聞いていたというよりか、「音」や、もっと曖昧で抽象的な音の空気感の方が、私の中にはっきりと残っている。それは、小さい頃から両親に「音」自身を聴くことを教わったからかもしれない。この音はフォルテ?ピアノ?聞いていると笑いたくなる?それとも悲しく感じる?そんなふうに、音を通して感情や想像を膨らませていくようになった。 私も幼い頃からピアノを習っていたが、自分は演奏するよりも「聴くこと」の方が向いていると、早い段階で気づいていた。それでも、音楽を通して得た感覚は、今の自分に深く根付いていると感じている。 音と同じように、色もまたトーンやニュアンス、強さを持つ抽象的な要素。それらを組み合わせることで、一つの「構成(コンポジション)」が生まれ、そこから新しい物語が紡がれる。 今の私は、音と色の両方がデザインにおいて欠かせないツールだと感じている。日々の暮らしが慌ただしく、不確かに感じられる今だからこそ、音や色の持つ抽象性は、静かに自分自身と向き合うきっかけを与えてくれると思う。それらは、私たち一人ひとりの解釈にゆだねられ、感情や記憶、身体の感覚とそっとつながりなおす時間を届けてくれる。 そんな感覚をみなさんと共有したくて、ヌクの静かであたたかな空気感を映し出すプレイリストを作りました。どうぞ、「色を聴く」ような気持ちでこのプレイリストをお楽しみください。 nuku musicを聴く Hania Rani、Chin Sooyoung、H Hunt、Yoko Kikuchi、Nils Frahm、Yumiko Morioka など、世界中のアーティストの楽曲をセレクトしました。このプレイリストは、時間をかけて、ゆっくりと育っていく予定です。 文章、イメージ:菊地エリザ
色と音
私は音楽に囲まれて育った。母はピアニスト、父はアコースティック・エンジニアで、日常にはいつも何かしらの音が流れていた思い出がある。 そんな環境にいながら、意外にも「音楽そのもの」を聞いていたというよりか、「音」や、もっと曖昧で抽象的な音の空気感の方が、私の中にはっきりと残っている。それは、小さい頃から両親に「音」自身を聴くことを教わったからかもしれない。この音はフォルテ?ピアノ?聞いていると笑いたくなる?それとも悲しく感じる?そんなふうに、音を通して感情や想像を膨らませていくようになった。 私も幼い頃からピアノを習っていたが、自分は演奏するよりも「聴くこと」の方が向いていると、早い段階で気づいていた。それでも、音楽を通して得た感覚は、今の自分に深く根付いていると感じている。 音と同じように、色もまたトーンやニュアンス、強さを持つ抽象的な要素。それらを組み合わせることで、一つの「構成(コンポジション)」が生まれ、そこから新しい物語が紡がれる。 今の私は、音と色の両方がデザインにおいて欠かせないツールだと感じている。日々の暮らしが慌ただしく、不確かに感じられる今だからこそ、音や色の持つ抽象性は、静かに自分自身と向き合うきっかけを与えてくれると思う。それらは、私たち一人ひとりの解釈にゆだねられ、感情や記憶、身体の感覚とそっとつながりなおす時間を届けてくれる。 そんな感覚をみなさんと共有したくて、ヌクの静かであたたかな空気感を映し出すプレイリストを作りました。どうぞ、「色を聴く」ような気持ちでこのプレイリストをお楽しみください。 nuku musicを聴く Hania Rani、Chin Sooyoung、H Hunt、Yoko Kikuchi、Nils Frahm、Yumiko Morioka など、世界中のアーティストの楽曲をセレクトしました。このプレイリストは、時間をかけて、ゆっくりと育っていく予定です。 文章、イメージ:菊地エリザ

夢工房
第二のコレクション、「タイニ・グリーン」を兼ねてデザイナーのオフェリー・ジェラールさんとのコラボレーションで木のトレー「KATU」(カテュ)シリーズを作りました。 彼女はベルギー、ブリュッセルをベースに、自然に囲まれながら生活をしている。敢えてゆっくりしたライフスタイルを選び、自分の手で丁寧にオブジェを作りたい思いを大切にしながらデザインの道を歩んでいる。 オフェリーの思いや夢について語って頂きました。 - 温もりはどのような時に感じられますか? 家や自分のアトリエのドアを開けて、入った瞬間。 プライベートな空間にいることは、私にとって完全な平和。自分自身といれて、落ち着いていて、安全に感じて、本当に安心する場所。自分の悩み事や、仕事の嫌なこと、悪い天気まで、全て外に置いておけるような気持ちになれるのが最高! 家というものは、自分の好きなものを集めたり、自分の匂いをどんどん残したりしながら、ゆっくりと作り上げていく大切な場所だと思う。 - オフェリーさんのデザインアプローチはどのようなものですか? 私のデザインはとても合理的ですが、そこに少し詩的なひねりを加えるのが好き。人のための機能的なオブジェもデザインするし、子供のおもちゃもデザインする。どちらの場合も、遊び心が重要だと思う。 私自身、自分のことを情熱と夢に突き動かされる、シンプルな人だとも思っているからね。 - ベッドの横にある小さな模型について話してくれますか? これは6歳の頃からの私の夢。 小さい頃からハウス・アトリエというコンセプトに憧れていて、いつか自分で建てることを夢見ていた。そんな中、つい最近小さな古屋が建っている土地の一部を手に入れる機会を得た。私は建築家ではありませんが、そこに見えるアトリエを設計してみて、この模型を作りました。毎週末、少しずつ自分で、あるいは友達と一緒に改装している。ベッドの横に模型を置いておくことで、夢を目にしながら毎日頑張ろうと思える。 理想を言えば、完成した暁には、そこで手で作れるもののマイクロファクトリーを開いて近所を通りかかった人が、職人を訪ねるように中に入ってくる。本でもいいし、オブジェでもいいし、ドローイングでもいい。なんでも自分の手で作れるものを作成する場所として、「La Fabrique à rêves」(夢工場)と名付けるつもり。 - 木というマテリアルを使い始めたきっかけはなんですか? 小さい頃から手を動かすのが好きだった。動かして、作るということがと本当に好きで。木は、扱いやすいもので、身近にある素材だから、最もアクセスしやすいマテリアル。自然に使い始めて、今に至っている気がする。木の不思議で素敵なところは、ごくシンプルな操作で素材がオブジェにと、命が吹き込まれるように感じる。 -...
夢工房
第二のコレクション、「タイニ・グリーン」を兼ねてデザイナーのオフェリー・ジェラールさんとのコラボレーションで木のトレー「KATU」(カテュ)シリーズを作りました。 彼女はベルギー、ブリュッセルをベースに、自然に囲まれながら生活をしている。敢えてゆっくりしたライフスタイルを選び、自分の手で丁寧にオブジェを作りたい思いを大切にしながらデザインの道を歩んでいる。 オフェリーの思いや夢について語って頂きました。 - 温もりはどのような時に感じられますか? 家や自分のアトリエのドアを開けて、入った瞬間。 プライベートな空間にいることは、私にとって完全な平和。自分自身といれて、落ち着いていて、安全に感じて、本当に安心する場所。自分の悩み事や、仕事の嫌なこと、悪い天気まで、全て外に置いておけるような気持ちになれるのが最高! 家というものは、自分の好きなものを集めたり、自分の匂いをどんどん残したりしながら、ゆっくりと作り上げていく大切な場所だと思う。 - オフェリーさんのデザインアプローチはどのようなものですか? 私のデザインはとても合理的ですが、そこに少し詩的なひねりを加えるのが好き。人のための機能的なオブジェもデザインするし、子供のおもちゃもデザインする。どちらの場合も、遊び心が重要だと思う。 私自身、自分のことを情熱と夢に突き動かされる、シンプルな人だとも思っているからね。 - ベッドの横にある小さな模型について話してくれますか? これは6歳の頃からの私の夢。 小さい頃からハウス・アトリエというコンセプトに憧れていて、いつか自分で建てることを夢見ていた。そんな中、つい最近小さな古屋が建っている土地の一部を手に入れる機会を得た。私は建築家ではありませんが、そこに見えるアトリエを設計してみて、この模型を作りました。毎週末、少しずつ自分で、あるいは友達と一緒に改装している。ベッドの横に模型を置いておくことで、夢を目にしながら毎日頑張ろうと思える。 理想を言えば、完成した暁には、そこで手で作れるもののマイクロファクトリーを開いて近所を通りかかった人が、職人を訪ねるように中に入ってくる。本でもいいし、オブジェでもいいし、ドローイングでもいい。なんでも自分の手で作れるものを作成する場所として、「La Fabrique à rêves」(夢工場)と名付けるつもり。 - 木というマテリアルを使い始めたきっかけはなんですか? 小さい頃から手を動かすのが好きだった。動かして、作るということがと本当に好きで。木は、扱いやすいもので、身近にある素材だから、最もアクセスしやすいマテリアル。自然に使い始めて、今に至っている気がする。木の不思議で素敵なところは、ごくシンプルな操作で素材がオブジェにと、命が吹き込まれるように感じる。 -...

静けさの温もり
温もりという感覚は生まれつきのものであり、普遍的なもの。 でも私たちは個人的な経験や生まれ育った環境によって構築された、それぞれのユニークな温もりの定義を持っていると個人的には信じている。私には、母の力強くて温かいピアニストの手や、愛犬の柔らかなベルベットのような耳など、この概念に最も共鳴する思い出がいくつかある。 このような思い出をたくさん持ち、長い間愛情豊かな環境にいたけれど、この概念が私にとっていかに重要であるか、ということに気づいたのはフィンランドに住んでから。 フィンランドは、私がこれまで住んだ中で最も寒い土地。永遠に続くかと感じてしまう暗い冬では周囲のあらゆるものが凍ってしまい、時間が止まったかのような、静けさの世界になる。 不思議にこのとてつもない寒さ、静けさ、そしてフィンランドでの孤独は、私の温もりの原点を探る鍵となった。最初は凍るような寒さに対応する為の身体的な感覚を通して、そして少しずつ内面的な温かさの探求へと変わり、特定の色、質感、音、あるいは言葉さえも、私の居心地の良さを感じさせる一部であることに気づいた。 寒さの中に温かさを見出したこの個人的な体験は、物事はその反対があってこそ存在するというシンプルな考えを私に振り返させてくれた。寒いからこその温かさ、暗いからこその光、硬いからこその柔らかさ、など。世界にはコントラストというものが必要なのだ。 当たり前のことのように聞こえるこのことは、私にとって、デザインの分野を超え、より一般的な意味で現在の分断された世界情勢を受け入れるために重要な心のあり方だと感じている。 鏡のように、相反するものは必ず存在し、それと向き合い、受け入れることで私たち自身の見方を再考し、より内省的で博愛に満ちるきっかけになるかもしれない。 皆様にとって美しいコントラストに満ちた、素敵な一年となりますように。 温かい思いを込めて エリサより 写真:サンナ・レフト
静けさの温もり
温もりという感覚は生まれつきのものであり、普遍的なもの。 でも私たちは個人的な経験や生まれ育った環境によって構築された、それぞれのユニークな温もりの定義を持っていると個人的には信じている。私には、母の力強くて温かいピアニストの手や、愛犬の柔らかなベルベットのような耳など、この概念に最も共鳴する思い出がいくつかある。 このような思い出をたくさん持ち、長い間愛情豊かな環境にいたけれど、この概念が私にとっていかに重要であるか、ということに気づいたのはフィンランドに住んでから。 フィンランドは、私がこれまで住んだ中で最も寒い土地。永遠に続くかと感じてしまう暗い冬では周囲のあらゆるものが凍ってしまい、時間が止まったかのような、静けさの世界になる。 不思議にこのとてつもない寒さ、静けさ、そしてフィンランドでの孤独は、私の温もりの原点を探る鍵となった。最初は凍るような寒さに対応する為の身体的な感覚を通して、そして少しずつ内面的な温かさの探求へと変わり、特定の色、質感、音、あるいは言葉さえも、私の居心地の良さを感じさせる一部であることに気づいた。 寒さの中に温かさを見出したこの個人的な体験は、物事はその反対があってこそ存在するというシンプルな考えを私に振り返させてくれた。寒いからこその温かさ、暗いからこその光、硬いからこその柔らかさ、など。世界にはコントラストというものが必要なのだ。 当たり前のことのように聞こえるこのことは、私にとって、デザインの分野を超え、より一般的な意味で現在の分断された世界情勢を受け入れるために重要な心のあり方だと感じている。 鏡のように、相反するものは必ず存在し、それと向き合い、受け入れることで私たち自身の見方を再考し、より内省的で博愛に満ちるきっかけになるかもしれない。 皆様にとって美しいコントラストに満ちた、素敵な一年となりますように。 温かい思いを込めて エリサより 写真:サンナ・レフト

作るという音楽
すべては工場の方との出会いから始まった。日本の中央部に位置する一宮市にある家族経営の工場は、天然素材を使った繊細な織物を開発している。 そこで織られるテキスタイルは、職人の感性、そして日本一柔らかいことで知られるその地の水によって、特別な品質を持っている。 織り機の規則的な音がリズムを生み、柔らかなメロディーを誘う。 001フロスティ・フォレストのコレクションの制作中に撮影された美しいシーンのショートフィルム。 作曲:Okko(菊地洋子) サウンド録音:ジェームス・ケン・バトラー 近藤毛織工場
作るという音楽
すべては工場の方との出会いから始まった。日本の中央部に位置する一宮市にある家族経営の工場は、天然素材を使った繊細な織物を開発している。 そこで織られるテキスタイルは、職人の感性、そして日本一柔らかいことで知られるその地の水によって、特別な品質を持っている。 織り機の規則的な音がリズムを生み、柔らかなメロディーを誘う。 001フロスティ・フォレストのコレクションの制作中に撮影された美しいシーンのショートフィルム。 作曲:Okko(菊地洋子) サウンド録音:ジェームス・ケン・バトラー 近藤毛織工場